2016年12月25日日曜日

海辺のカフカ・下巻②

下巻②

星野さんが宿に帰ってくると、ナカタさんは、死んでいた。


家出少年のカフカは、父が殺されたことで、殺人とは関係ないのだが、唯一の家族

という事で、警察に行方を追われる。

やがて、高松にも、捜索が及ぶ。

大島さんが、「しばらく身を隠していた方がいい、自分の山小屋があるのでそこに
案内をするよ」と言う

二人乗りのスポーツカーにカフカを乗せて出かける

マニュアルシフトを小気味よく、変速しながら二時間半ほど走る

その小屋は、静かな森の中にある。

「少しの間ここで過ごすといい、食料もある」

「しかし、この森は深く、奥に入ると帰れなくなる。 戦争前、ここで訓練をしていて、二人の

 兵隊が行方不明になった。森中探しても、とうとう、見つからなく、捜索は打ち切られた。

だから、一定以上の場所から奥には、入らない様に!」  と 注意して帰る

その後、何日かしてから、カフカは迷わない様にペンキや方位磁石の持って深い森の奥に

立ち入って行く。

これ以上入っては、いけない、という線を超え、どんどん奥に入る

あるところで、二人の兵隊に会う。三八式の旧式銃を持った兵隊だ。

その兵隊が「俺達について来る様に」と案内する

険しい道、急なのぼり坂、かなり奥に入ったところで、急に平らな、場所に出てくる

そこには、小さな、村がある

同じ形の家が立ち並び、電気も通っている。でも、人の姿は見えない

家の中に入って休んでいると、ドアをノックする音が聞こえる

開けると、佐伯さんが立っていた。

中で二人でハーブ茶を飲む

「こうしていると、まるで図書館にいるみたいだね」

「コーヒーが無くて、大島さんがいないだけ」

「そして本が無いだけ」 と佐伯さんは言う

しばらく、無言の後、佐伯さんが言う

「今こうしてここに来るのも、本当のことを言えばそんなに簡単なことではなかった!
 
でも、どうしてもあなたと会って  話しがしたかったの!」

彼女はゆっくり言葉を選びながら言う

「私は、記憶を全部燃やしてしまったの」

「田村くん、あの絵を持っていって」

「図書館に飾ってあったあの絵ですか?」

「そう、【海辺のカフカ】の絵、 あの絵をあなたに持って行って欲しいの、あの絵は元々、

あなたの物だったのよ!だってあなたは、あそこにいたのよ、そして私は、その隣にいて、

あなたを見ていたの」

ずっと昔、海辺で風が吹いていて、真っ白な雲が浮かんでいて、季節はいつもの夏だった」
 
「あなたは、僕のお母さんですか?」

「私は、そのむかし、大事なものを捨てたの」

「何よりも私の 愛していたものを」

「さようなら、田村くん!元の場所に戻って生き続けなさい」

「遅くならないうちにここを出なさい、森を抜けて元の生活に戻るのよ、入口は、そのうち
 また、閉じてしまうから・・」


ドアを開け、佐伯さんは、立ち去って行く


続く





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